あらすじ
「銭を稼がん者に一文も渡す気はない」——夫が朝餉の膳へ箸を置くより軽くそう言ってから、三年。わたくしは一文も受け取っておりません。
代わりに、嫁入りに持ってきた講を崩して寒竹を仕入れておりました。羅宇になるのは、節と節のあいだが真っ直ぐな一節だけ。節を跨いで削れば、その日は同じ艶で上がります。二月ほど吸って、煤が段で溜まり、吸い口へ黒い輪を吐くまでは。
離縁を告げられた日、竹は一本も持ち出しませんでした。控えの紙だけを揃えて出ました。
三年分の払いが竹問屋で突き合わされたとき、誰の名で銭が動いていたかが出ました。空いた削り台には、家の名を置いても小刀は動きません。自分の名を吸い口の根へ刻んだわたくしの店先へ「戻れ」と立った夫へ、同じ一句をお返しするお話。