あらすじ
一代で巨大企業「天城ホールディングス」を築き、住宅、医療、介護、教育、物流まで支配する企業城下町「天城スマートシティ」の王として君臨してきた天城征一郎。七十六歳の誕生日、彼は三人の娘へ突然問いかける。
「私をいちばん愛している娘に、会社をやる」
長女・麗華と次女・美冬は美しい言葉で父への忠誠を誓う。しかし、生活困窮者を支援する弁護士となった末娘・澪だけは、父の会社が隠してきた過労死、介護切り捨て、個人情報による住民差別を指摘する。
「お父さんを愛しているから、正しくないことを正しいとは言いません」
激怒した征一郎は澪を勘当し、会社と財産を麗華と美冬へ譲る。ところが経営権を失った途端、征一郎は二人から認知機能の衰えた厄介者として扱われ、邸宅も専属スタッフも奪われてしまう。雨の夜、何も持たずに街へ放り出された彼を助けたのは、かつて自分が解雇した元社員だった。
一方、征一郎の若き秘書・黒瀬直人は、姉妹の対立をあおりながら会社の乗っ取りを進めていた。後継者の座と黒瀬を奪い合う麗華と美冬。実の父と異母兄を陥れる黒瀬。やがて、医療データの改ざん、個人情報の売買、過労死の隠蔽という巨大企業の闇が明らかになる。
父が路上生活に陥ったと知った澪は、彼を助けるか迷う。弱った父を見捨てることはできない。しかし、父を救うために被害者の声を踏みにじることもできなかった。
「あなたの命は守ります。でも、されたことをなかったことにはできません」
娘との再会によって、征一郎は初めて、自分が築いたものの正体と向き合い始める。会社を取り戻すためではなく、自らの罪を証言するため、彼は最後の株主総会へ向かう。
愛を称賛の言葉で測った父。父に認められるため、他人を踏みつけた娘たち。貧困から抜け出すため、自分も支配者になろうとした男。そして、父の会社も罪も継がないと決めた末娘。
崩壊する家族経営と格差都市を舞台に、愛と服従、介護と支配、赦しと責任の違いを描く、現代社会派企業ドラマ。