あらすじ
「雨女は要らない。私は、晴れの聖女ルチアと結婚する」
建国祭の壇上で、婚約者ジュリアンから突然そう告げられたヴェロニカ。
彼女は七年間、風と雲を読み、雨の時刻と行き先を調整してきた。
けれど、彼女の仕事は、成功した日ほど何も起きない。
一方、ジュリアンが新たに選んだ聖女ルチアは、散った雲を一つに集め、瞬く間に空を晴らすことができる。
ヴェロニカは警告する。
今日は、雲を一つに集めてはいけない。
しかしジュリアンは聞く耳を持たず、ルチアに奇跡を披露させた。
歓声に包まれる青空。
その外で、一つに集められた巨大な雨雲は下町へ向かっていた。
このままでは家々が水に沈む。
麦畑へ落とせば、今度は作物が潰れる。
そしてヴェロニカたちが見つけた、雨を受け止められる唯一の場所は――。
「見ろ、この広場を」
そうジュリアンが誇った、建国祭の会場だった。
人々を逃がしたあと、ヴェロニカは彼の晴れ舞台の真上で雲を開く。
これは、目に見える奇跡だけを選んだ男が、七年間「何も起こさなかった」女の仕事を知るまでの話。