あらすじ
王都暦局で働く三級暦務官ノアは、「余計なことをするな」と上司に疎まれ、曜日も誕生日も存在しない辺境へ左遷されてしまう。
赴任した町では、人々は「昨日」も「明日」も曖昧なまま暮らしていた。
給料日はなく、契約期限もない。
子どもは自分の年齢を知らず、祭りも休日もなく、亡くなった人を見送る日さえ存在しない。
そんな町で、ノアは一人の少女から言われる。
「……私には、誕生日がないの」
剣も攻撃魔法も使えないノアの仕事は、人々の証言や古い記録を集め、失われた「日付」を世界へ刻み直すこと。
少女に初めての誕生日を。
職人たちに初めての給料日を。
町に初めての市場の日を。
そして、大切な人を送り出すための葬送の日を。
一日ずつ町へ「今日」を取り戻していくたび、人々の暮らしは少しずつ変わり始める。
しかし、その裏では王都を支配する中央暦院が、ある理由から全国の「日付」を管理し、人々の歴史そのものを書き換えていた。
やがてノアは、国家が隠し続けてきた大きな秘密と、「存在しない日」に消えた人々の真実へ辿り着く――。
これは、誰にも気づかれなかった地味な役人が、一年を取り戻し、人々の人生を取り戻していく物語。