あらすじ
海沿いの港町、その崖下には、忘れたい恋を酒へ変える海底酒場〈ネレイス〉がある。
店を営むミラ・ヴァレンタインのもとへ、ある嵐の夜、九年前に何も告げず姿を消した幼なじみの船長、ノア・グレイが現れる。彼が注文したのは、飲み干せば愛した相手のすべてを忘れられる、特別な忘却酒だった。
「俺の恋を、酒にしてくれ」
ノアは相手の名を明かさない。
しかし、語られていく初恋の記憶は、どうみてもミラとの思い出ばかりだった。
忘れたいと言いながら、彼女を口説くノア。
忘れさせると言いながら、彼を帰そうとしないミラ。
二人は互いの本心に気づきながら、七夜をかけて一杯の酒を造っていく。
しかし、最後の一杯が完成する頃、ミラはノアが隠していた本当の目的を知る。
甘い初恋、苦い別れ、酸っぱい嫉妬。
これは、忘れたい男と忘れられたくない女が、恋に酔い、酒に溺れ、正しい岸辺を捨てて、ともに海へ堕ちるまでの物語。