あらすじ
妻の美咲を交通事故で亡くして八か月。
事故車を運転していた夫・高瀬直人に法的な過失はなかった。それでも、美咲の母・澄江が病院で放った言葉を、直人は忘れられない。
「どうして美咲が死んで、あなたが生きてるの」
「必ずあなたに復讐しますから」
幼いころ両親に捨てられた直人にとって、澄江は、結婚して初めて知った「母親」でもあった。
だが美咲を守れなかった自分には、もう彼女の息子でいる資格などない。
そう思い、澄江との関係を断っていた直人のもとへ、ある日奇妙な招待状が届く。
「娘を守れなかったあなたには、娘の代わりに私がたっぷり食べさせてあげます」
料理の名は――
「お義母さん特製・腸内熟成カリー」
続けて送られてきたのは、和式便所と大鍋の写真。
直人はその意味を察する。
それでも、食べることを決めた。
これで澄江の復讐が終わるなら。
そして最後に合鍵を返し、二度と「お義母さん」と呼ばないために。
これは、復讐を受けるためなら帰れるのに、愛されるためには帰れない男と、娘を失った母親の、一皿のカレーをめぐる物語。