あらすじ
二〇二六年、防衛大学校を首席で卒業した二十二歳の神谷誠司は、事故を境に天正十年――一五八二年の甲斐へと飛ばされた。
そこで耳にしたのは、木曾義昌の不穏な動き。
そして日付を確認した誠司は気づく。
武田勝頼が天目山で最期を迎えるまで、残された時間はわずか四十日。
織田信長、徳川家康、北条氏政。
外から迫る敵だけではない。
兵力は各地へ分散し、国衆は揺れ、報せは遅れ、武田家は戦う前から崩れ始めていた。
誠司に剣豪の腕はない。
未来の兵器も、魔法も、特殊能力もない。
あるのは、防衛大学校で学んだ戦略、作戦、戦史、指揮統制、兵站、情報分析。そして武田家がこのままでは滅びるという歴史知識だけ。
誠司が最初に目指すのは、織田軍を打ち破ることではなかった。
守れない城は捨てる。
散った兵を集める。
曖昧な報告を改める。
退く道を先に用意する。
そして、次の裏切りが起きる前に手を打つ。
「勝つことは、まだ考えなくていい」
「まず武田を、滅ぼさせない」
やがて武田勝頼は、正体不明の若者が示す異質な軍略に目を留める。
だが、歴史を変えれば変えるほど、誠司が知る未来は役に立たなくなっていく。
これは未来を知る青年が武田家を救う物語。
そして――未来が分からなくなった青年と武田勝頼が、自らの知略で新しい歴史を作る物語。