あらすじ
『妖精に魅入られた者は、彼らの世界へ引きずり込まれ二度と人間の世界へは帰れない』
子供の寝物語だと思っていたその伝承は、真実だった。
森の奥深くにある秘密の庭に迷い込んだ僕は、そこで花の妖精・リリアと出会う。外の世界を知らない無垢で美しい彼女に惹かれ、僕は深く、どうしようもなく恋に落ちていった。
「君と一緒に外の世界に行きたい」
ある夕暮れ時、僕のその言葉が妖精の世界への扉を開いてしまう。足元にフェアリーリングが浮かび上がり、甘い香りと永遠の誘惑に理性を奪われ、僕は完全に「魅入られて」しまった。
しかし、共に妖精の世界で永遠を生きることを望む僕に対し、彼女は涙ながらに首を振る。
僕から人間としての未来や帰る場所を奪うことを悲しんだ彼女は、僕を人間の世界へ繋ぎ止めるため、自らの身体を無数の花びらへと変え、妖精の魅了を断ち切ったのだった。
光の旋風が収まった後に残されたのは、彼女の化身のような一輪の白い花だけ。
これは、妖精の世界に心だけを囚われたままの僕が抱きしめ続ける、美しくも切ない最初で最後の初恋の物語。