あらすじ
夏休み。
中学一年生の少年は、毎年訪れている祖父母の住む田舎町で、一匹の黒猫を追いかけた。
たどり着いた川辺の木陰には、いつも本を読んでいる一人の青年がいた。
名前も知らない二人は、猫を眺め、石を投げ、他愛もない話を交わすようになる。
蝉の声が響く昼下がり。
夕立のあとに立ちのぼる土の匂い。
お盆の線香の香り。
ゆっくりと流れる川。
何気ない夏の日々は、少年にとってはただの夏休みだった。
けれど、その何気ない言葉や振る舞いは、知らないうちに青年の心を少しずつ変えていく。
少年は最後まで、そのことを知らない。
これは、誰かを救おうとした物語ではない。
ひとりの少年が過ごした、たったひと夏。
そして、その夏に静かに救われた、ひとりの青年の物語。
あの夏が、どこで終わったのか。
その答えを知る者は、誰もいない。