あらすじ
孤児として育ったアンリオンにとって、七歳の冬に出会った伯爵夫人リリィは、初めて自分を抱きしめてくれた人だった。
差し出された葡萄色のショールの温もりを、彼は生涯忘れなかった。
伯爵家のひとり娘ローズの遊び相手として迎えられたアンリオンは、彼女と兄妹のように育っていく。困った時に笑い合うための、ふたりだけの合言葉「ギャリュビョ」。木剣を交え、なぞなぞをし合い、いつまでも続くと思っていた穏やかな日々。
けれど、身分という見えない壁は、いつも二人の間にあった。
十六歳になったローズが恋に落ちたのは、完璧な微笑みをたたえた第三王子。アンリオンだけが、その微笑みの裏にある危険に気づいていた。しかし、初めての恋に浮かれる令嬢に、幼馴染の忠告は届かない。
「あなたの愛が重すぎて、顔も見たくない」
とローズが言い、アンリオンは屋敷を去った。
軍隊にはいったアンリオンはいくつもの戦いに加わり、小将軍にまでなった。
別れてから七年後、宮廷の舞踏会で再会することになるが、アンリオンの顔には戦いで受けた深い傷があった。
この年月の中で、それぞれの思いは変わったのだろうか。ふたりの愛はどうなるのだろうか。