あらすじ

声をかけようとすると、体が固まった。高校の三年間、隣の席の風間さんに、僕は一度も話しかけられなかった。言葉を整理し終える前に、いつも時間が来てしまう。すれ違うたびに二人で同時にうつむく——それが、言葉を使わない、二人だけの会話だった。 卒業式の日、彼女は折り畳んだ一枚の紙を寄越した。「あとで開けてね」。書かれていたのは、たった一行。僕はそれに返事を書いて、書いた瞬間に後悔した。もう、取り返せなかった。 春休み、無言の電話が鳴る。誰かはわかっていた。受話器を握ったまま、二人は眠りに落ちる。草原と湖。壊れた玩具の川。喋る鳥や獣たち。「選べ」と誘う者、「捨てろ」と急かす者。方向のない声だけを頼りに、二人は同じ夢の中で、互いを探す。 やがて目を覚まし、二人は初めて、言葉で話しはじめる。けれど——あの日の"一行"の記憶だけが、なぜか、噛み合わない。

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小説を読もう2026/07/14
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