あらすじ

壁際が、私の定位置だった。 一曲目を婚約者と踊ったことは、五年で一度もない。 それでも私は、殿下の執務を陰で回し続けた。 名前の載らない仕事だと、知っていながら。 卒業夜会の夜、王太子は衆目の前で婚約破棄を告げた。 身に覚えのない断罪と、一緒に。 侯爵令嬢エルネスタは、泣かなかった。 「承知いたしました」 一礼して、胸元から契約書の写しを取り出す。 五年間、この日のために持ち歩いてきた一枚を。 第十二条、王家側の帰責による解消手続き。 精算は、即日始まった。 翌朝から、王宮の決裁が止まる。 署名の前を誰がやっていたのか、殿下はまだ知らない。 未開封のまま返される、手紙の束。 空欄がひとつだけ残された、精算のリスト。 彼女が契約書の外で取り戻したいものは、何なのか。

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小説を読もう2026/07/14
  • 現在の作品婚約破棄は承りました。復縁のご相談は、代理人を通してくださいませ