あらすじ
「……身勝手な期待してきてさ。こっちが期待通りにならなきゃ、何にもならないってのに」
――22歳・日雇いバイト・ボロアパート暮らし・高校中退・元不登校。
社会的にも人間的にも限りなく底辺に近いそんな男、藤条 行(とうじょう ゆき)。
彼は自らの矛盾するプライドと自尊心、自己肯定感を持ってして自身の底辺度合いを正しく理解し、その上で今日に至るまでずっと子供のように拗ね続けていた。
日に日に増していく無自覚にもメンタルを削り続ける劣等感を前に、酒とスマホに逃避し、現実から目を逸らそうとし続ける日々。
何も前進しない。時間は流れ、周りは豊かになり、自らを置いていくばかりで決して自身は何も前進しない。
もう諦めた。
一人前の幸福も、夢にまで見た望む未来も、何もかも。
ただ生きるためだけに底辺で居続ける。
そう思っていた。
――そうやってまた来てしまった朝。
眠気に留められた瞼には開く隙間もなく、自らの温もりを内包した布団の中でそっと身を揺らす。
体勢がうつ伏せへ移ろうとした瞬間、それを邪魔するような質量。
布団に押し付けられて潰れる異常な胸の質量と重圧、背や鎖骨にかかるくすぐったい絹のような感触、股の下の不在感。
その全てが、彼の思考を覚醒させた。
刹那の間に胸元と股下へと伸びた手のひらが、確かに感じた異なる感覚。
――これは持たざる者(底辺)が、新たに持った物(顔と乳)を背負って生き抜く物語である。
(※シリアス要素はほぼ無しの予定です)