あらすじ
「ミーラ。お前との婚約を破棄する!」
王族の息子……つまり王子は皆が集まる舞踏会で婚約者に対して宣言した。相手の綺麗な女性は……王子が隣で肩を抱き込んでいるその人を呆然と見つめる。
「ボクは真実の愛を見つけた。お前はもう用済みだ!」
その場が騒然とする。この坊ちゃんは自分の一言で好き勝手出来ると思っているが、実際は自国と隣国を揺るがす大きなこととなる。ここまで平穏を漕ぎ着けた両親がそんなこと許すはずがない。だがこのアホな坊ちゃんは気づかない。
坊ちゃんは未だに勝手に連れてこられて固まっている異世界転生者に微笑む。
「名前は確か……ゴンサブロウ……だったかな? ゴンちゃんでいい? 喜んでくれ。ボクと結婚しよう」
名前に似つかわしくない可愛い顔した日本人顔の青年……ゴンサブロウは「え、え、えええ!」と素っ頓狂な声を上げた。
「聞いてない! 僕は勇者さまの元へ戻る──」
「あんな野蛮な男の元に行くなんて危ないだろう? 彼が使う力も恐ろしい」
「市民は皆勇者さまを讃えています! 邪険にしてるのは王族くらいで──」
「ええい、うるさい! キミは今からボクの花嫁になるんだ! とびきりの純白正装を用意しているから。連れて行け」
「うわああああん! やだああああ! 勇者さまああああ!」
召使いに連れて行かれる異世界転生者。一部始終を見つめていた坊ちゃんの……元婚約者は(なんということでしょう)と額に手を当てた。
(元聖女として見過ごせぬ王子の愚行……! やはりこの国を制するのは勇者しか……)
勇者の恋人を連れ去ったこと、元聖女の怒りに触れたこと、国を揺るがすほどの一大事になりそうなことになるとは王子だけが気づかない。