あらすじ
僕はとにかく喧騒が嫌いだった。都会なんて持ってのほかだ。ならどこに行くだろう――そう、田舎だ。
良く知らないローカル線を乗り継いで「倉下」という全く知らない田舎に来た。
たまたま登った山には小さな神社があった。その神社は手順を踏めばどんな願いもかなえてくれるという伝説があった。
休憩がてら本を読んでいると、海月という少女が僕の前に現れた。
しかし、海月との会話はどこか噛み合わない。令和を知らなかったり、アニメも知らない。スマホなんてもってのほか。
彼女と会話を重ねる中で僕の中に一つの疑問が浮かぶ。
――彼女はいったい何者なんだ。と。
気になって、僕は海月に通っている高校を聞いた。
しかし、その高校はすでに閉校していた。とっくの昔。全盛期は昭和後期。閉校は平成前期。どうあがいたとしても、海月の年齢ではない。けれど、閉校した学校を口にする理由もない。
気になった僕は閉校した学校に乗り込む。しかし学校はただの古い学校でこれといって特別なところはなかった。
どうしても煮え切らなかった僕は図書館で資料を調べていた。
そこで見つけたのだ。海月とあまりにも特徴が合致しすぎる少女の雑誌が。
しかし少女は六十年前に死んでいた。海月はいったい何者なのか、僕はあたりをつけた。
海月は神、もしくはそれに近しいものだ。
そしてそれはあっていた。だから僕は願おうとしたんだ、神社の伝説を信じて海月を救うために。
でも、そうはいかなかった。海月に記憶を消されてしまった。海月がそれを良しとしなかったんだ。
けれど、僕は思い出した。海月のことを。
願いには代償がつきものだ。好みをかけても海月を救うなんて言わなかった。
僕が神様に願ったのは、「海月と一日倉下を見て回ること」ただそれだけだった。
一日は短くて、すぐに終わってしまう。パキン、と何かが割れる音がして視界が真っ暗になった。
心底楽しそうな二人の笑い声が神社から聞こえてきた。