あらすじ
没落男爵家の長女ロゼは、家計を支えるため、ある内職をしている。恋文の代筆である。
ご令嬢方の依頼を受け、想い人の好みを調べ上げ、一通金貨一枚で「その人に効く手紙」を書く。腕は確かで、成約率は八割。ただし依頼人には固く言ってある――「成就したあとは、ご自分の言葉で書いてくださいませ」。
そんなロゼのもとに、難攻不落の案件が舞い込んだ。社交界一の堅物、レーンフェルト公爵。令嬢三人から同時に依頼を受けて送った渾身の恋文三通に、公爵からの返事は一通だけ。しかも宛名は依頼人の誰でもなく――
『拝啓、代筆人殿』
……ばれている。
正体を隠した文通、始まってしまいました。書簡でだけ饒舌になる堅物公爵と、手紙の中でだけ自由になれる代筆令嬢の、紙と文字の恋のお話です。