あらすじ

昭和33年、冬。貧困と孤独の中で育ち、誰の視界にも入らない「透明な子供」だった土屋昭男は、夕暮れの空に燃え上がるようにそびえ立つ建設中の巨大な鉄塔に魂を奪われた。 ​それから数十年。学歴もなく、人との関わりを持てない昭男は、日の当たらない地下深くで岩を砕く「トンネル発破作業員」として泥臭く生きていた。彼にとって、地上で変わらずに温かな赤い光を放ち続けるその塔だけが、唯一の恋人であり、すべてを包み込む母のような存在だった。 ​しかし、無情にも時代は移り変わる。 より高く新しい塔の誕生により、人々は古いシンボルから次々と目を背けていく。日に日に色褪せていく世間の関心の中で、昭男は悟る。彼女もまた、自分と同じようにこの社会から用済みにされようとしているのだと。 ​2026年8月。 社会から零れ落ちた男は、愛する者を永遠の美しさのまま救済するため、冷たい起爆装置を手に取る。 ​「一緒に行こう。自分たちが必要とされている場所に」 ​誰にも理解されずとも構わない。これは、世界から見捨てられた男が不器用に捧げる、ただ一つの純潔な愛の記録である。

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カクヨム
カクヨム2026/07/13
  • 現在の作品昭和塔