あらすじ
コウタは、ヒーローみたいなやつだった。
いつもみんなの前に立って、笑って、手を伸ばしてくれる。
絶対に、置いていかない。
マアカにとって、コウタはずっとそういう存在だった。
しかし、高校二年の春。
久しぶりに街に帰ってきたコウタは、もう笑わなくなっていた。
仮想空間で剣を交える競技、エリシャルブレード。
その前大会優勝者でありながら、コウタはエリブレの話すらしようとしない。
誰よりも前に立っていたはずの少年は、自分の中に閉じこもっていた。
なら、今度はアタシが前に出る。
マアカは、コウタが立っていたエリブレの舞台へ飛び込む。
コウタの代わりに前へ立ち、もう一度あの舞台へ引っ張り出すために。
かつて自分を助けてくれたヒーローを。
今度はマアカが立ち上がらせる物語。
「とかいう感じでどうかな?」
ソウラが、淡々と言い放った。
「いや、なにが?」
マアカは冷めた目で言った。
今、けっこう壮大な感じで何かが流れていた。
「素敵なお話になりそうですね」
ヒスイはいつもの笑顔で、普通に受け入れていた。
「いや、だからさ……」
マアカは一度、言葉を止める。
止めて、ちゃんと考えた。
「これなに!?」
「あらすじだよ」
「いや、あらすじってなんの!?」
「書いてるよね? 見えないの?」
「見えてるわよ!! アタシが代わりにどうのってやつでしょ!!」
マアカは思わず身を乗り出した。
「つか、エリブレあんまり出ないでしょ!!」
「マアカさん……それを言ってしまっては……」
ヒスイが、そっと目を伏せた。
「ピカピカ! ドカーン! バリバリ! みたいなの全然出ないからね!」
「台無しだよ」
ソウラが半目で言った。
「台無しなのはこっちの認識よ!」
あらすじとは。
何かもっと、こう、作品の入口として読者を誘導するものではないのか。
「あのさ! すごく気になるんだけど!」
「なに?」
「このメタあらすじさ……手法古くない?」
「だからこそ斬新」
ソウラは、さらりと言った。
「あっそう」
マアカは、それしか言えなかった。
※本作品はカクヨム、pixivにも掲載しています。