あらすじ
「じゃーんけーんぽん。あたしの勝ち! じゃあ今日はトワが犬ね」
高校生の頃、僕と1歳年上の幼馴染み・薊(あざみ)は、恋愛をゲームとして認識していた。
じゃんけんで勝った方が、負けた方を1日犬にできる『SMごっこ』。
首輪をかけられ、頭を大雑把に撫でられる。男のプライドを侮辱されるのは嫌いだったけれど、次のゲームで勝って、彼女の悔しそうなしかめ面を見下ろす瞬間は三度の飯より好きだった。
僕たちはどちらも「S(支配者)」だった。同じ極だからこそ強烈に惹かれ合う、磁石のような恋。
薊のことは、数え切れないほど好きだった。
悪戯っぽい笑顔も、心臓の音も、夢のために毎日猛勉強している姿も。
それでも――彼女が僕を完全に支配しようとすることだけが、どうしても許せなかった。
お互いに決して折れられないまま、大学進学を機に訪れた、静かな皹(ひび)と別れの季節。
「私が従順な子だったら、私達ずっと一緒にいられたよね?」
数年後、ひとりの部屋の押し入れから出てきたのは、あの赤い首輪。
プライドを守り抜いて彼女を失った僕は、静かにそれを首へと巻きつける。
支配したくて、支配されたくなかった。
不器用すぎる二人の、痛くて愛おしい青春のラブレター。