あらすじ
医師、弁護士、公認会計士――。潰れかけの実家病院を悪徳業者から守るため、地獄の修行の末に三つの資格を揃えた天海一希、二十九歳。満を持して故郷へ帰った彼を待っていたのは、父の過労死の報せと、十億円の借金、そしてスタッフもほとんど去ったボロボロの病院だった。
「それでも、この病院は閉めない」
父が命を懸けて守った地域の灯を消すまいと院長を継いだ翌朝、一希の両手は黄金色の光を放っていた。触れた病巣を消し、死にかけた細胞をよみがえらせる“癒しの手”。だがその力には、笑えない縛りがあった――軽い傷なら、何度でも。だが、癌を消し、死の淵から人を引き戻すほどの“大技”を使えば、その翌日は指一本動かせなくなる。
実質、二日に一人しか救えない、不完全な奇跡。ならば、と一希は医者と士業の頭脳をフル回転させる。地元の人々は保険診療で誰より手厚く。他県や海外の富豪には、どこでも治らぬ病を治す“完全自由診療”として正当な対価を。売上は一円まで正しく計上し、税も完璧に納める。不正がひとつもないからこそ、税務署にもマスコミにも、誰にも潰せない――。
そして手術室では、超スピードで終わる治療を隠すため、麻酔中の患者の横でスタッフとオセロに興じる長時間オペの茶番劇。かと思えば、父を陥れた悪徳業者や病院乗っ取りを企む敵は、法と会計の正論で完膚なきまでに叩き潰す。
二日にひとつしか奇跡を起こせないポンコツな神さまが、亡き父の病院を世界一の聖域へと導く、医療経営ファンタジー、開幕。