あらすじ

二〇一〇年、大雨の夜。沙耶は、二十五年前に殺害された姉の墓前に立っていた。この日は事件の公訴時効が成立する日であり、犯人が永遠に裁かれない現実が、彼女の胸に重くのしかかっていた。幼い頃に姉を失った沙耶は、断片的な記憶と消えない喪失感を抱えながら、独自に事件を追い続けてきた。遺品の手帳に残されたイニシャルを手がかりに調査を重ね、五年前、橋本という男に辿り着くが、決定的証拠は得られなかった。  時効当日、橋本から突然の電話が入る。「殺したのは自分だ」との告白だった。沙耶は彼を事件現場の河川敷に呼び出す。橋本は、当時婚約者がいながら姉と交際し、別れ話のもつれから衝動的に殺害したと語る。長年罪を抱え続け、時効成立を機に告白したのだった。  しかし沙耶は動じない。すでに橋本の存在を突き止めており、彼が時効後に告白する性格であることも見抜いていた。彼女は録音機で自白を記録し、調査資料とともに世間へ公表する準備を整えていた。刑事罰は与えられなくとも、社会的責任を負わせるためである。  「これは復讐ではなく、けじめだ」と語る沙耶。橋本はすべてを失う未来を悟り、雨の中で崩れ落ちる。沙耶は振り返らずその場を去り、長い年月にようやく区切りをつけるのだった。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
エブリスタ
エブリスタ2026/07/12
  • 現在の作品時効の日に