あらすじ
*登場人物*
麻衣――二十二歳。楽器店で働き、ピアノ調律師を目指している。亡き母との思い出を正しく残そうとするあまり、音の揺れや間違いを許せない。
碧良――二十五歳。廃材から音の出る作品を作る造形作家。移動遊園地の設営を手伝いながら、平静な顔の下に別れへの寂しさを隠している。
空南――十七歳。好奇心旺盛な高校生。人懐っこく、疑問に思ったことをそのままにしない。
*あらすじ*
夏休みの二十一日間だけ町外れに現れる移動遊園地「パレット・ランド」。今年で最後の営業を迎えた初日、回転木馬の自動演奏が途中で止まってしまう。
壊れたのは、十二年前に手作業で継ぎ足された、この町だけの旋律だった。調律師を目指す麻衣、設営を手伝う碧良、偶然居合わせた空南は、失われた続きを取り戻そうとする。
三人が集めるのは、ラムネ瓶の栓、踏切、喫茶店のベル、雨粒など、町に残る夏の音。やがて古い一枚の写真から、三人が十二年前にも出会っていたこと、旋律が迷子だった幼い空南を慰めるために生まれたことが明らかになる。
同じ音を完全に再現するのか。それとも、今の自分たちの音を続きとして残すのか。