あらすじ

六月の雨の夕方、駅前の植え込みで過呼吸を起こしてしゃがみ込んだ私の背中に、知らない誰かの手のひらが触れた。 顔を上げると、エプロン姿の女子大生が、私の目線まで膝を折って、「私の息、聞こえますか」と訊いてきた。 吸って、止めて、吐く。 四秒、七秒、八秒。 数えてくれているのだと気づいたとき、私はもう、彼女の呼吸の音に救われていた。 私──藤代澪、二十五歳、総合コンサル勤務。表向きは冷静な完璧主義者で、誰にも言えない持病はパニック障害。 彼女──七尾穂波、二十歳、私立美大の油絵専攻、駅前のカフェ『深屋珈琲』でバイト。 翌日、閉店後の店で、私は震えながらお願いした。 「あなたの呼吸の音だけが効くので、苦しくなったら電話に出てもらえませんか」 料金は、いりませんと、彼女は言った。 「その代わり、なんでもひとつ、私の言うことを聞いてください」 いつ、何を、いくつ。 全部、彼女の機嫌次第。 頓服より彼女の息のほうがずっと効いてしまう私は、いつから自分が誰のために息をしているのか、分からなくなっていった。 過呼吸持ちのエリート社会人と、距離感バグり気味の年下女子大生の百合です。

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カクヨム
カクヨム2026/07/12
  • 現在の作品そのひとときに、呼吸を合わせて~エリート社会人の私が年下の女子大生に甘やかされる話~