あらすじ
北陸の城下町・汀市には、幻の名碗「雪紅」の伝説が残されている。雪のように白い肌を、一筋の紅が走る奇跡の茶碗。だが披露を目前に碗は消え、翌朝、住み込みの繕い師が川で遺体となって発見された。人々は、彼女が名碗を盗んだのだと噂した。
八年後。かつてその噂を広めるきっかけを作ってしまった三上尚人は、陶工の道を捨て、繕い処「継処たちばな」で働き始める。寡黙な主人・有坂千景のもとへ持ち込まれる、割れた香合、砕かれた切子、偽りの呼継茶碗、そして紅の残る五片の陶片。それぞれの器に刻まれた傷と嘘は、やがて八年前の死と「雪紅」の真実へと繋がっていく。
割れ口は嘘をつかない。継ぎ目は隠さない。
金継ぎの技と四季の移ろいを通して、奪われた名と歪められた記憶を継ぎ直す、工芸本格ミステリ。