あらすじ
2027年1月1日、午前零時。
ハワイ・マウナケア山頂にあるジェミニ北望遠鏡で、若きデータ科学者・葛城湊は、海王星の公転軌道上――太陽・海王星系L5付近に、説明不能な中間赤外線源を発見する。
当初、それは観測機器の不具合か、宇宙線が生んだノイズにすぎないはずだった。
しかし、ジェミニ、すばる、ケック。
三つの巨大望遠鏡が独立して検証を重ねるにつれ、単一だと思われた熱源は複数の成分へと分かれ、周囲の星空にまで不自然な歪みを残し始める。
自然現象なのか。
未知の天体なのか。
それとも、人類がまだ名前を持たない何かなのか。
科学者たちは、見えているものを証明しようとする。
組織は、責任の置き場所を探し始める。
政府は、情報の価値と危険性を測り始める。
そして世界は、まだ何も知らない。
やがてL5で待つものの正体が明らかになった時、人類は初めて、自分たちよりはるかに進んだ存在と向き合うことになる。
だが、これは人類が宇宙へ希望を見つける物語ではない。
未知の存在に滅ぼされる物語でもない。
人類が、自らの恐怖と欲望と醜さによって、
差し出された未来から、その手を離していく物語である。