あらすじ
姉さんは、迷宮で記憶を失った。
――それだけなら、まだよかったんだ。
辺境の村から迷宮都市グランベルへやってきた姉弟、リゼットとクルト。生計のため冒険者となった初日、姉は迷宮で突然倒れ、すべての記憶を失ってしまう。
同じ日、都市は一人の英雄の死に泣いていた。
攻略組最強の剣士、「銀閃の剣聖」セレス・アーレンス――迷宮の深層で殉職した、と。
F級最底辺から再出発する姉弟。だが弟のクルトは、少しずつ気づいてしまう。
甘党だった姉が、辛いものを好むこと。
剣を握った姉が、まるで別人のように強いこと。
そして戦いの後、姉が自分を見て「……誰?」と呟くことに。
僕の姉さんは、本当に姉さんなのか。
だとしたら、本当の姉さんは――どこへ消えた?
これは、記憶を失った姉と、真実に近づいてしまう弟の物語。
裏切りに堕ちた剣聖の魂が残した、復讐と絆の迷宮譚。
たとえ君の中身が誰であっても、僕は君を「姉さん」と呼ぶと決めたんだ。