あらすじ
王宮刺繍院のエルナには、日没の鐘から残光が消えるまでの間だけ、布に本心を縫い留められる力がある。受け取った者には、言葉ではなく確信だけが届く。——代価は、その想いにまつわる自分の記憶。
第一王子ユリウスの婚礼衣装を任されたエルナは、彼の無事を願って一針ずつ本心を縫い、彼を愛した時間を少しずつ失っていく。蜂蜜菓子の味も、白い花の朝も、名を呼ばれた夕刻も。
最後の一針の代価を知りながら、それでも彼女は縫うことを選ぶ。そのとき、王子が選んだものは。
忘れても、恋は選び直せる。切な×救済の短編です。