あらすじ
『Lord of Debt(借金貴族) ― カンタベリーの古城とファミリーオフィス ―』
イングランド南東部、カンタベリー近郊。
十二世紀から続くアシュフォード城には、今も一つの名家が暮らしている。
第十九代当主エドワード・アシュフォード。
ノルマン征服以来続く貴族家の末裔であり、城主であり、地主であり、そしてファミリーオフィスの経営者でもある。
保有資産は約八十億円。
農地、賃貸住宅、商店、森林、金融資産。
数字だけ見れば大富豪だ。
しかし現実は違う。
雨漏りする城。
毎年増える修繕費。
容赦なく届く税金の請求書。
歴史的建造物ゆえの厳しい規制。
地域社会から求められる寄付と責任。
祖先たちは剣を手に戦場へ向かった。
だが現代の当主が向き合うのは、
銀行家、
税理士、
投資家、
行政機関、
そして終わりの見えない維持費だった。
不動産会社、農業会社、観光会社、投資会社。
四つの事業を率いながら、エドワードは一族千年の歴史を守るため今日も決算書と向き合う。
Brexit。
コロナ禍。
ウクライナ戦争。
インフレと金利上昇。
激動する二十一世紀の英国を舞台に描く、城と家族と資産を守るための戦い。
これは剣も魔法もない。
だが、現代の貴族にとって最も過酷な戦場の物語である。