あらすじ
王子は夜会の場で、婚約者である令嬢を断罪した。
「真実の愛を選ぶ」と告げ、
「不貞の疑いがある」と責め、
新たに隣へ立たせたのは、か弱く涙ぐむ聖女候補。
会場の視線は、一斉に令嬢へ向いた。
けれど、その婚約破棄は、まだ成立していない。
王宮婚約調停局・上席調停官エレナ・ヴァルクレアは、静かに契約書を開く。
愛が冷めたことは、罪ではない。
真実の愛を選ぶことも、自由である。
だが、婚約契約、贈与品、護衛費、席次、名誉補償、弁明機会。
そのすべてを踏みにじったなら、話は別だ。
エレナは怒らない。
泣かない。
愛を裁かない。
ただ、契約違反だけを記録する。
「婚約破棄の宣言は確認しました。では、損害額を算定します」
公開断罪された令嬢の尊厳を取り戻すため、
王宮調停官が、契約書に朱を入れる。
これは、愛ではなく手続きで、理不尽を裁く物語。