あらすじ
名前を呼ばれない毎日だった。客先常駐のシステムエンジニア。二十九歳。誰もが俺を、会社の名前で呼ぶ。
祖母の三回忌に行けなかった夜、終電を逃した俺は、乗り間違えた終バスを、どうしてか降りられなかった。
行き先を、自分で決めなくていい。それが、あまりに優しくて。
辿り着いたのは、地図にない山あいの村。
古い旅館の女将は、初対面の俺に三つ指をついた。「――ずっと、お待ちしておりました」
温泉、囲炉裏、涙が出るほど旨い飯。優しい村人たち。擦り切れた心が、ほどけていく。
だが、この村はおかしい。電波も新聞もなく、暦に年号がなく、俺は自分の名前を思い出せない。元SEの職業病で「調査ノート」に異常を書き留めるうち、俺はある夜、この村の"正体"に気づいてしまう。
――ここは、地図のどこにも、載っていない。
なぜなら、この村は…
全ての伏線が回収される最終盤、あなたはきっと、もう一度最初から読み返したくなる。
泣けて、少し怖い、やさしい村の物語。【完結済・全話毎日更新】