あらすじ
中学一年生の朝霧《あさぎり》心晴《こはる》は、クラスに話し相手はいても、放課後に遊ぶ友達はいない。入学式で心晴のシャーペンを拾ってくれた同じクラスのミコが入学後、数日で不登校になる。前日にミコの異変に気づきながらも、声をかけず塾《じゅく》を優先してしまった心晴。はじめは罪悪感を抱いていたが、次第に彼女の存在が薄れていった。
「嫌われたくない。波風を立てたくない」
本音を押し殺してきた心晴は、先生と同級生の板挟み《いたばさみ》でついに限界を超え、こう呟《つぶや》いた。
「——全部、消えちゃえばいいのに」
その瞬間、世界は一変する。辿《たど》り着いたのは、捨てられた言葉が実体化する異世界「掲示板の檻《おり》」。そこを支配するのは、孤独な狐の神・白詩《はくし》。唯一優しくしてくれたミコを救うため、学校中の悪意を掲示板へ集め、「誰も傷つかない世界」を作ろうとしていた。けれどその世界では、「ウザい」の奥にある「寂しい気持ち」も、「消えたい」の奥にある「助けて」も、すべて消えてしまう。本音を失った子供たちは、やがて「感情のない檻」へ閉じ込められていく。
「いい子でいなければ価値がない」
成績も、人間関係も、『ちゃんとしている子』でいようとしていた心晴もまた、「成績」が記された檻に囚われる。しかし、頑張りきれない自分を認め、檻を打ち破る。彼女が始めたのは、十人の仲間とミコを救うための命がけの「ドロケイ救出作戦」。助けられた者が、今度は誰かを助けに走る。その中で心晴は、誰もが「気づいてほしい」と言えずに苦しんでいたことを知る。
最後に心晴たちは、本音を重ねた「声」で、白詩の孤独を包み込んでいく。
現実に戻った心晴。廊下《ろうか》の掲示板に刻まれた悪意の落書きは、今、彼女たちの手でカラフルな付箋《ふせん》に塗り替えられていく。言葉の力を信じ、新たな坂道を上り始める。それは、「嫌われたくない」と飲み込んできた少女が、「言葉」でもう一度誰かと繋がろうとする物語だ。