あらすじ

夏になると、桐島の右耳には、潮風のようなノイズが聞こえる。 それはきっと、故障したイヤフォンのせいではない。 一年前、何も告げずに自分の前から消えた少女――七瀬透子との記憶が、今も胸の奥に残っているからだ。 高校二年の夏。 兄を事故で亡くして以来、誰かと深く関わることを避けていた桐島の前に、炭酸飲料のように騒がしく、危うい少女・透子が現れた。 深夜のコンビニ。 青い自販機。 ぬるいサイダー。 二人で走った、誰もいない国道。 「未来なんて知らない」 そう笑っていた透子は、夏の終わりとともに東京へ引っ越し、やがて桐島との連絡を絶った。 それから一年。 忘れようとしても忘れられない夜をなぞるように、桐島は一人で海を目指して走り始める。 その途中、立ち寄ったコンビニで聞こえたのは、忘れていたはずの彼女の声だった。 失った人への怒り。 言えなかった「好き」。 離れていた一年間。 そして、消えない傷。 忘れることと、なくすことは違う。 傷ついたまま大人になろうとする二人が、もう一度同じ朝へ向かって走り出す、ひと夏の青春恋愛小説。

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カクヨム
カクヨム2026/07/12
  • 現在の作品夜を追い越した僕らのこと