あらすじ
転職の合間に一人旅へ出た会社員・湯浅巡は、土砂崩れで山あいの小さな村に閉じ込められる。
その村では、いなくなった人を「死んだ」と言わない。「渡った」と言う。
七年に一度の祭——「渡りの晩」を目前に控えた村で、巡は、ここへ来る途中に撮った一枚の写真に気づく。バス停に立つ、白いシャツの青年。それは七年前の晩に「渡った」はずの、宿の娘の兄だった。
渡った者の名は紙から消え、顔は写真から霞む。祠には宛先のない葉書が納められ、ときどき「返り」が来る。
これは、記憶が白く消えてしまう前に書き残された、ひと夏の記録の束である。
読み終えたときあなたがこの物語をどちらの話として閉じるのか、それだけは、書き手にも分からない。
全14話・毎週更新/民俗ホラーミステリー