あらすじ
高校生の梓には、付き合っている男の子がいた。彼の名前は武志。武志と眩い高校生活を送っていたのだが、やがて目の前に大学進学という大きな壁が立ちはだかる。
その頃、梓は公園で捨て猫を見つける。茶トラの猫なので、『チャトラン』と名付けたその猫は、梓たちによく懐いていた。
夢を追って東京の大学に進学することを決めた武志。遠距離になってしまうことを危惧した武志は、梓に別れを切り出す。それを涙ながらに受け入れた梓は、足元に寄り付くチャトランの温もりを感じながら、傷ついた心を癒していたのだが、そのチャトランがある日突然、姿をくらます。失意に打ちのめされた梓だったが、忙しい大学生活を送っているうちに、いつしか梓の意識の中では、チャトランのことが記憶の奥へと押しやられていくことになったのだが……。
時は過ぎて、武志はシステムエンジニアとして、東京で夢をかなえていた。そんなある日、地元大阪に帰省した武志の目に、薄汚れた猫が入ってきた。その猫は、武志の姿を見るなり、懐かしそうにすり寄ってくる。その特徴的な毛並みから、その猫がかつて梓と一緒にいたときにいつも足元にいたチャトランであることに気づいた武志。チャトランを連れて、梓といつもデートをしていた公園へと向かったのだった。
人気のない公園、そこで武志は来るはずもない人を待っていたのだが、偶然にも武志の目の前に姿を現したのは、かつて付き合っていた梓だった。
武志はずっと心の奥底にしまっていた梓への思いを打ち明ける。それは、梓も同じだった。五年ぶりに再会した二人の想いを引き合わせたもの、それは紛れもなく、かつて二人で可愛がっていた猫のチャトランだった。
(10207字 原稿用紙換算27枚)