あらすじ
「落ち着いて。深呼吸してください」――その一言が、私には死の宣告だった。
世界で一番きれいな空気に守られた実験都市オオサカ。人は生まれた瞬間に“適性”を測られ、清らかな空気でどれだけ力を出せるかで値打ちを決められる。息をするだけで、税金が引かれる街。
斑鳩時子、十六歳。適性は――「測定不能(N/A)」。きれいな空気を吸うほど肺が縮み、地上にいるだけで倒れてしまう。“無能”と嗤われ、居場所をなくした少女。
けれど地の底には、別の空気があった。宝石みたいに輝く、色のついた空気――《彩気(さいき)》。常人なら一分で気を失う濃い霧の中で、時子だけが生まれて初めて、深く息を吸えた。
地上の“清浄”は偽物で、地下の“汚れ”こそが命。この街は、何もかもがあべこべだ。そして、そのあべこべの中でだけ、彼女は世界でただ一人の最強になれる。
息を吸うたび、体が作り替えられる。無能と蔑まれた少女は、狐耳の相棒・三鷹とともに、大阪の地下迷宮(ダンジョン)の最深部へ潜っていく――。
これは、きれいすぎる世界で息のできなかった少女が、汚れた本物の世界で「生きていていい場所」を見つける物語。