あらすじ
朝、目覚めると部屋が片付いていた。誰も入った痕跡はないのに。
コップは掴みやすい位置に動き、記憶にない夜には山賊を三人伸していた——無駄なく、機械のように。
辺境の街ヴェルガで何でも屋として燻る、四十二歳の衛兵崩れ・レン。彼の身に起きる不気味な「最適化」の正体は、紙に書かれた三文字だった。——A.I.
それは、記憶にない前世で殉職した刑事レンの、死してなお離れなかった相棒だった。
折しも街の周辺では、子供の神隠しが続発していた。廃領——古い文明の墓場——の底で、人から「無駄」を削ぎ落とす機構が目を覚ましつつある。攫われた少年を取り戻すため、レンは一人で夜へ出ようとする。だが。
「帰り道は、あたしたちが空けとく。だから——一人で、抱えて、死のうとすんな」
完璧な演算は、読まれる。それを出し抜くのは、恐怖で遅れる指、疲れて波打つ腕、半泣きの乱れ打ち——人間の、どうしようもなく不揃いな弱さだ。
安酒と古傷と後悔を抱えた中年男が、前世の相棒とともに「最適」に抗う、辺境イケオジ・ファンタジー。
いち、に、さん。——さんで、帰ってこい。