あらすじ
世界がゾンビに呑み込まれてから、三年。
伊豆の海を望む崖の上に、今なお暖簾を掲げ続ける一軒の温泉旅館があった。
その名は――『潮見亭』。
若女将・湊真帆は、誰も訪れない玄関を毎朝掃き、客室を整え、今日も旅館を開ける。
源泉の熱を利用した自家発電。
温泉水を濾過して作る生活用水。
硫黄を含んだ蒸気による、ゾンビ除けの防衛設備。
奇跡の湯に支えられた潮見亭は、文明が崩壊した世界に残された、数少ない安全地帯だった。
機械室に引きこもる無愛想な技術者・千晴。
どんな状況でも料理人の誇りを捨てない西村。
元看護師の薫子、感染症を研究する中山、見習いの優斗。
そして、ゾンビの気配を誰よりも早く察知する柴犬のゆず。
癖の強い仲間たちと共に、真帆は温泉を守り、食料を集め、迫り来るゾンビや略奪者たちに立ち向かっていく。
なぜ、誰も来ない旅館を守り続けるのか。
それは、いつか再び暖簾をくぐる誰かを、最高の笑顔で迎えるため。
たとえ世界が終わっても。
電気が止まっても。
ゾンビが玄関先まで押し寄せても。
お客様が来る限り、女将の仕事は終わらない。
温泉、料理、古武術、そしておもてなし。
終末世界を生き抜く若女将と仲間たちの、湯けむりゾンビサバイバル。
――『潮見亭』は、本日も営業中です。