あらすじ
言葉で感情を安易に表現することに強い嫌悪感を抱き、「一目惚れ」や「幸せ」といった世間の陳腐なフレーズに虚無感を覚えている主人公の少年。彼は言葉の氾濫から逃れるように冬の街を歩く中、一人の少女による圧倒的な路上ライブに遭遇する。寂しさを湛えながらも力強く歌う彼女の姿に、少年は言葉にできないほどの激しい衝動を覚え、その場から逃げ出してしまう。
帰宅途中で胸の熱さや高鳴りに気づいた少年は、自身のこの感情が世間でいう「一目惚れ」という記号に当てはまることを自覚し、その陳腐さに激しい目眩と葛藤を覚える。自身の感情を薄っぺらい言葉で定義したくないと必死に否定しながらも、少年の体は彼女の引力に抗えず、翌日から毎日のように路上ライブの場所へと足を運ぶようになる。しかし、少女は二度と姿を現さず、少年は頭から消えてくれない彼女への焦燥感と、行き場のない怒りのような感情を喉の奥に募らせていく。