あらすじ
勇者が竜を討ち、王都が歓喜に包まれる凱旋式。その祝福の最中、一人の男だけが英雄ではなく「死体」へ歩み寄った。
元王国遠征軍の死因縫い、ジグ・ヴァレス。
彼は戦果を称える声を無視して竜の首を解体し、「この竜は勇者に殺されていない」と断言する。竜の口から現れたのは、王家の紋章が刻まれた聖銀の杭。その瞬間、王国中が信じてきた英雄譚は崩れ去った。
さらに暴走した竜の呪いに反応したのは、喉に黒い縫い痕を持つ処刑待ちの少女・リネア。ジグは彼女の縫い糸を一本抜き、死因を縫い替えて呪いを竜へ返すことで王都を救う。しかし英雄を否定した代償として、彼自身が反逆者の烙印を押され追放されてしまう。
死者に嘘を着せることだけは決して許さない男と、「真実だけを信じる」と誓った少女。二人は移動解剖室を兼ねた馬車で各地を巡り、凱旋式、葬儀、裁判、婚礼――華やかな舞台の裏に隠された死因を暴いていく。
死体を開けば、国家の秘密が現れる。
縫い針を走らせれば、死因は再現される。
偽りの英雄、腐敗した聖堂、王国が密かに続ける竜飼育計画、そして一度殺されたはずの魔王――。
これは、戦いの後に始まる物語。
死者だけが知る真実を縫い上げ、世界中の英雄譚を公開処刑していく、一人の「死因縫師」のダークファンタジー。