あらすじ
人口約五万人ののどかな王国に、絶世の美女にして、王の妻に君臨しようとした女がいた。大富豪ヴァジス家の令嬢、リリア・ヴァジス。すきとおった青い瞳に、美しくなびく金髪。刺繍のほどこされた紅いドレスに茶色のコルセットを纏う彼女は、誰にでも気を許させる優しい笑顔を浮かべ、誰もが「親しみやすい聖女」だと信じて疑わなかった。――だが、人々はまだ知らなかったのだ。彼女の裏の顔が、自身の美と、決して誰にも汚させない絶対不可侵の領域を守るため、百五十人もの若き女を解体してきた冷酷な猟奇暗殺者であることを。「私は美しくあるために若き女を天に返したのよ。王子にふさわしい美しい妻として――‼」婚約者であるフランツ王子とのヒリヒリするような心理戦。屋敷の地下から漂う、薔薇の奥に隠された鉄の匂い。そして、すべてを欺いた聖女が最期に断頭台の上で放つ、狂気と気高きプライドに満ちた言葉とは。美を求めすぎた女の、あまりにも美しく残酷なピカレスク・ゴシックホラーサスペンス、開幕。