あらすじ
二〇三八年、環京市。
司法証拠保管施設「白庫」が爆破され、十七人が死亡した。
逮捕されたのは、事件直前に白庫へ侵入していた司法音声鑑定士・水城澪。入退室記録、監視映像、爆発物の購入履歴、そして澪自身の声による犯行声明――四つの証拠は、彼女の有罪を疑いようのないものに見せていた。
だが澪には、犯行声明から消された「五文字」が聞こえていた。
彼女を疑いながら弁護を引き受けた元検察官・久世航平。司法の裏側を追う元記者・南雲灯。過去に罪を犯し、互いを信用できない三人は、証拠も証言も世論も、一人の権力者によって設計されていることを知る。
人間の罪悪感や信念が異形の存在《証影》として現れる世界で、三人が挑むのは、一人の無実を証明する裁判ではない。
人間から「間違える自由」を奪い、正しい判決だけを与えようとする社会そのものだった。
真実を公表すれば、救われた無数の人々が再び傷つく。
沈黙すれば、澪の有罪は完成する。
正しい証拠が、正しい判決を生むとは限らない。
それでも人は、誰かを裁くことができるのか。