あらすじ
芸術と文化が栄え、
人々が優雅な暮らしを送る
美しき王国――エトワール王国。
王都の中心にそびえ立つ王宮「パレ・ロワイヤル」では、夜ごと舞踏会や晩餐会が開かれ、貴族たちは華やかな日々を、謳歌していた。しかし、その煌びやかな世界の裏側では、王宮に関わる貴族ばかりを狙った不可解な連続殺人事件が国中を震撼させていた。
犠牲者の傍らには、必ず一輪の白薔薇。
その異様な共通点から、人々は犯人を「白薔薇の亡霊」と呼び、恐怖に怯えるようになる。事件は次第に王家をも巻き込み、王国全体を揺るがす大事件へと発展していく。
事件の捜査を命じられたのは、冷静沈着で感情を表に出さない王子。国を守るためなら誰であろうと疑い、情けよりも真実を優先するその姿から、人々は彼を「氷の王子」と呼んでいた。
一方、王都の片隅で静かに暮らす一人の町娘は、偶然にも事件現場付近で犯人らしき人物を目撃し、唯一の重要参考人となる。王宮で保護されることになった彼女だったが、暗く狭い地下通路へ足を踏み入れた瞬間、激しい過呼吸を起こし、その場に倒れ込んでしまう。
彼女の身体には、誰にも知られてはならない古傷と火傷の跡が刻まれていた。そして幼い頃より失われた記憶と、決して消えることのない心の傷。暗闇と閉ざされた空間、そして男性への恐怖は、今もなお彼女を苦しめ続けていた。
決して交わるはずのなかった二人は、事件の捜査を通して少しずつ距離を縮めていく。不器用ながらも互いを理解しようとする中で、凍てついていた王子の心は少しずつ変わり始め、町娘もまた、長い間閉ざしていた心を開いていく。
しかし、事件を追うほどに浮かび上がるのは、二十年前に起きた孤児院火災という忌まわしい過去だった。事故として処理されたその火災は、本当に事故だったのか。なぜ被害者たちは皆、その火災と関わりを持っていたのか。そして町娘の身体に残る火傷は、あの日とどのように繋がっているのか。
封印された記憶、王宮に隠された秘密、渦巻く陰謀、そして幾重にも重ねられた嘘。すべての謎が一つに繋がったとき、二十年前から続く真実は月明かりの下で姿を現す。
それは、エトワール王国の歴史そのものを書き換えるほど残酷で、美しい真実だった。白薔薇が咲く夜、王宮の秘密は血に染まる。
これは、傷を抱えた一人の町娘と、冷徹な王子が、悲しい過去と残酷な運命に抗いながら真実を追い求める、愛と謎に満ちた物語。