あらすじ
氷河期の迫る地球。人類は宇宙船〈アーク・プロメテウス〉と地底都市への退避を進めていた。
誰が船に乗り、誰が地底へ行くか——その線を引く「選別局」で、アデルは公正な配分を守り続けてきた。だが基準は金と力に蝕まれ、腐敗を上申した彼は、報復として最終便の最後尾へ回される。
妻と息子は、先に船へ。「数ヶ月後の便で合流する」——その約束を胸に立った最終便の改札で、アデルは生涯でただ一度、自分自身を分母に入れた選別を行う。
船にも、地底にも、入れなかった者たちが、凍える地上に残された。閉ざされた都市の「吐息」に寄り集まり、名前を書き、子に名を付け、空を見上げて生きる日々。希望は習慣になり、やがて祈りになる。
そして四度目の冬を越えた夕べ、見上げ続けた空が、ついに応える。
『新・帰還する星 The Planet That Returned』前日譚。本編第一章と同じ時代を、別の場所から描く独立した物語です。本編未読でも読めます。