あらすじ
夢ばかり見ている、と村で呼ばれる少女リラ・マーレンの前に——空から、少年が落ちてきた。
機械と魔力が戦う異界の戦士、カイ。ぶっきらぼうで、パンひとつの恩も必ず魚で返す生真面目な少年は、村の誰もが笑ったリラの"おとぎ話"を、笑わなかった。
やがて、あるはずのない歪みが二つの世界を混ぜはじめる。カイの世界の鋼鉄の軍勢が、おとぎ話の王国に迫るとき——リラが独りで読み重ねてきた物語の知識は、「どんな偵察兵の報告より正確な地図」になる。ただし、その力を使うたび、大切な本が一冊、燃えて消える。
読むだけだった少女は、物語と引き換えに、あの人の隣に立つことを選んでいく。
触れるだけで、握らない。それが二人の距離だった。
けれど混ざり合った世界には、いつか分かれる日が来て。
「お前は俺の地図だ。目的地じゃない。お前がいるから、俺は迷わなかった」
世界ぶんの時差に引き裂かれても、彼は諦めない。だから彼女も、書き続ける。
読む側だった少女が語る側になるまでの、そして不器用な手がもう一度重なるまでの物語。