あらすじ
超高度戦略予測AI『プロヴィデンス』を擁する統治システム【ALG】は、全銀河の九九・九パーセントの安定を維持するため、生産性の低い辺境宙域『鉄錆(ラスト)領』の予算と兵站を完全凍結する「合理的間引き」を決定する。
この冷徹な正論に唯一異を唱え、中央監査局を追われた男――レナード・バザンは、左遷先である鉄錆領へと赴く。そこは、かつて銀河を震撼させた天才マクシミリアンの遺産を不法に引き継いだ、行き場のないアウトローや、効率主義から脱落した「無能な凡人」たちの吹き溜まりであった。
ALGは「不条理なバグ」となった鉄錆領を物理的に消去すべく、AIが制御する完璧な無人艦隊を差し向ける。対するレナードが手にしたのは、旧時代の戦術データと、一台の手回し式機械電卓のみ。
レナードは、特定の天才に依存する体制の脆弱性を突き、AIが「非合理的ノイズ」として計算から除外した、人間の生存本能、すなわち「兵站の横流し」「帳簿の改ざん」「不正規の経済圏」という泥臭い戦略を網羅した『凡人のシステム』を構築していく。
これは、完璧な正論の檻の中で考えることをやめたエリートたちに対し、不条理な現実に開き直った凡人たちが、自らの自尊心と一杯のうまい紅茶のために挑む、数字と硝煙のスペースオペラである。