あらすじ
ある日突然、高校生・松尾英夢は見知らぬ森の中で目を覚ました。
神の声はなかった。
勇者召喚もなかった。
チート能力も、ステータス画面も、何もなかった。
あるのは作業着と小型ナイフ、ライター。それだけ。
言葉も文明も見えない森で、彼はただ生き延びるために火を起こし、水を探し、罠を仕掛ける。
魔物の咆哮に怯え、怪我をしても誰も助けてくれない。
誰とも言葉を交わせないまま――・・・一年。
心が限界を迎えた頃、街道で一台の馬車と出会う。
差し出された一杯の水。初めての温かい食事。
「エイム」と名乗った声は「エルム」と聞き取られ、それが異世界で生きる彼の名前になった。
これは、世界を救う英雄の物語ではない。
言葉を覚え、村の一員になり、世界の広さを知っていく――これは一人の人間が、この世界の未来を託されるまでの記録である。
空に静月が昇る夜。
世界のどこかで、また裂け目がひらく。