あらすじ
大学に受かった。
人生最高の日、とまでは言わないけれど、自分の人生が少し前に進む気がして、湊はこれから始まる新しい日々をどこか浮かれた気持ちで考えていた。
そのはずだった。
次に目を覚ました時、湊がいたのは見知らぬ神殿の中。告げられた役目は、勇者。魔王を倒し、世界を救う。
けれど、その世界で湊を待っていたのは、歓声でも、祝福でもなかった。
恐怖。
嫌悪。
そして、伏せられる視線。
この世界で勇者とは、希望の名ではない。魔王の出現と戦乱を呼び、今ある秩序を壊す“破滅”の象徴だった。
何も分からないまま、剣聖の少女セリスに導かれ、湊は戦う術を学び始める。
だが、初めて魔物を殺した夜、彼は思い知る。
命を奪うことは、経験値になるイベントではない。勝っても、手に残った感触は消えない。
それでも、立ち止まることは許されなかった。
勇者を恐れる人々。勇者を狙う魔物。
そして、勇者が現れたことで少しずつ軋み始める世界。
湊はまだ知らない。
自分が救うはずの世界が、すでに壊れかけていることを。