あらすじ
「レイフィリア、お前との婚約を破棄する。私はマリベルを愛しているのだ」
王城の夜会。第二王子リオネルは、数百の視線が集まる中で高らかにそう宣言した。だが、婚約破棄を突きつけられた侯爵令嬢レイフィリアの心は、不思議なほど凪いでいた。
彼女は、香りに魔力を宿す稀少ギフト『香持ち(アロマギフト)』の保持者。そして――前世で「あなたの香りは唯一無二」と称賛されながら、報われず過労で命を落とした調香師・七海の記憶を宿す者。
また、『瓶の中身』としてしか見られていない。前世でも、今世でも。
実は、恋敵マリベルがまとう香りこそ、レイフィリアがかつて調香したもの。リオネルが恋をしたのは、彼女自身の記憶だったのだ。
「かしこまりました。では、王家の秘宝『追想の香水瓶』も、お返しいたします。――あなたの初恋の記憶ごと」
瓶から手を引けば、封じられた香りは揮発し、消えていく。殿下の初恋の記憶とともに――。
愛されたのは自分ではなく「瓶の中身」だった令嬢が、前世の誇りを胸に、優雅に反撃を始める。そして、彼女の香りは、やがて国境を越えて思わぬ運命を呼び寄せていく。
短編完結・ざまぁあり・転生ファンタジー。唯一無二の香りが紡ぐ、静かで痛快な逆転劇。