あらすじ
あらすじ
西暦2086年、日本。
人々はもう、人生に迷う必要がなくなっていた。
統合人生支援AI ORACLE〈オラクル〉 が、国民一人ひとりの性格、能力、健康状態、感情傾向、生活履歴、人間関係、将来リスクを分析し、最も幸福度が高くなる人生プランを提示する社会。
進むべき進路。
就くべき仕事。
暮らすべき場所。
関わるべき人間。
愛するべき相手。
休むべき時間。
避けるべき失敗。
すべては、あらかじめ最適化されている。
社会はそれを、「自由の負担からの解放」 と呼んだ。
人生最適化庁で働く瀬川玲央は、ORACLEの提示する人生プランを市民に説明し、受け入れを支援する職員だった。
彼自身もまた、AIの導きに従って大きな失敗のない人生を歩んできた。
しかしある日、玲央の前に現れた市民・水無瀬蒼が、ORACLEの人生プランを前に静かに問いかける。
「これは、誰の人生なんでしょうか」
数日後、水無瀬蒼は自由選択権を行使し、消息を絶つ。
さらに玲央自身にも、あり得ない通知が届く。
あなたには、自由選択区域への移行適性があります。
水無瀬を探すため、玲央は管理された都市を離れ、AIの最適化が及ばない自由選択区域へ足を踏み入れる。
そこにあったのは、不便で、不安定で、間違いに満ちた世界だった。
けれど、そこで生きる人々の表情は、なぜか管理社会の人々よりも鮮やかに見えた。
選ばなくていい幸福。
選ばなければならない不安。
その狭間で、玲央は初めて問い始める。
自由とは、失敗しない人生を与えられることなのか。
それとも、失敗する可能性を引き受けて、自分で選ぶことなのか。