あらすじ
「ちょっといい?」
「えっ」
突然、こんこんとテーブルを叩かれたかと思うと、頭上から声が降ってきた。おれは手を止めて、顔を上げた。
夜のファミレス。夕食時のピークはとうに過ぎたらしく、客の数はまばらで店内にはゆったりとした空気が漂っていた。厨房のほうから聞こえてくる食器の触れ合う音や遠くの席の話し声が静かに響いている。天井の照明から注ぐ橙色の光は柔らかく、あれだけ眠ったにもかかわらず、どこか眠気を誘われた。
会社から帰宅してそのまま泥のように眠り込んでしまい、目を覚ましたときには翌日の夜になっていた。自炊する気にもなれず、おれは駅前のこのファミレスにふらりと入り、遅い食事をとっていたのだった。
「あのさあ、不愉快なんだけど」